流れにおけるベルヌーイの定理を表す式について正しいのはどれか。2つ選べ。
a: 完全流体に適用される。
b: 重力とは無関係である。
c: 温度をパラメータとして含む。
d: 連続の式を導くことができる。
e: 力学的エネルギー保存則が適用される。
ベルヌーイの定理またはベルヌーイの法則とは、完全流体のいくつかの特別な場合において、ベルヌーイの式と呼ばれる運動方程式の第一積分が存在することを述べた定理である。ベルヌーイの式は流体の速さと圧力と外力のポテンシャルの関係を記述する式で、力学的エネルギー保存則に相当する。この定理により流体の挙動を平易に表すことができる。
ベルヌーイの定理が成り立つ条件として、同一流線上の二点で成り立ち、一方の点と他方の点でエネルギーの総量に変化がないことである。また、ベルヌーイの定理は粘性のない流体である完全流体のとき成り立つ。ベルヌーイの定理は、運動エネルギーと圧力の2つの力の和が一定であるので、速度が速くなると圧力が下がり、逆に速度が遅くなれば圧力が上がる。
ベルヌーイの定理は適用する非粘性流体の分類に応じて様々なタイプに分かれるが、大きく二つのタイプに分類できる。
外力が保存力であること、バロトロピック性(密度が圧力のみの関数となる)という条件に加えて、
①定常流という条件で成り立つ法則
②渦なしの流れという条件で成り立つ法則 である。
①の法則は流線上でのみベルヌーイの式が成り立つという制限があるが、②の法則は全空間で式が成立する。
外力のない非粘性・非圧縮性流体の定常な流れに対して以下式が流線上で成り立つ。ただし、vは流体の速さ、pは圧力、ρは密度を表す。

一様重力のもとでの非粘性・非圧縮流体の定常な流れに対して以下式が流線上で成り立つ。ただし、
vは速さ、pは圧力、ρは密度、gは重力加速度の大きさ、zは鉛直方向の座標を表す。

a:正解。ベルヌーイの定理は粘性のない流体である完全流体のとき成り立つ。
b:ベルヌーイの定理は、閉じられた系内での非粘性、非圧縮流体のエネルギー保存の法則を示す定理である。具体的には、流体が流れる際の任意の2点間で、圧力エネルギー、運動エネルギー、位置エネルギーの合計が一定であることを示している。位置エネルギーに対応する項が含まれるので、重力も関係している。
c:ベルヌーイの定理に温度に関する項は関係しない。ベルヌーイの定理は理想的な条件下(非粘性の流体や、定常的に流れる場合などの特定の条件下)でのみ正確に成り立つ。よって、温度は関係しない。現実の多くの流体は粘性を持つため、摩擦によるエネルギー損失などを考慮に入れる必要がある。
d:連続の式とは、流体の質量流量は流線上のどの断面でも常に一定であるという定理である。圧縮性流体では流線上で質量流量が一定である。また、非圧縮性流体では流線上で体積流量が一定である。
e:正解。ベルヌーイの定理とは流体の流れに対するエネルギー保存則である。ある流れにおいてエネルギーの損失や供給が無視できるとき、一つの流線上の2点のエネルギーは等しいとされる。